大阪府の医師確保の現状


大阪府の医師確保に関する課題

今後大阪府の人口は緩やかに減少する一方で、高齢化に伴い医療需要は約10%増加すると見込まれているため、医療提供体制については将来の人口や医療需要に合わせて確保していく必要があります。しかし国の方針により大阪府を含む医師多数都道府県では、医師確保計画策定時の医師総数を上回る医師確保数の将来目標を設定することができません。そのため大阪府では、医師偏在指標の区分によらず地域の医療需要の変化に合わせて、きめ細かく医師の確保を進めていく必要があります。

大阪府は、全国的に見れば医師偏在指標等のデータからも医師多数都道府県と見なされていますが、府内においては「医師多数でも少数でもない区域」に該当する二次医療圏(中河内・泉州)や、「医師偏在指標の全国基準値を下回る」二次医療圏(北河内・堺市)があるため、これらの地域において重点的に医師の地域偏在対策に取り組む必要があります。また、大阪府においては医師が不足している診療科を中心に医師の偏在対策を進める必要があり、特に「政策医療」と言われる各分野の中で、周産期分野(産科・新生児科)、救急医療(小児救急を含む)に加え、今後は感染症診療、総合診療などの分野についても医師の確保を進めています。

感染症医療

結核診療について、大阪府における罹患率は年々減少していますが、依然として全国でワースト1の状況が続いています。また、特に20~30歳代を中心とした若い世代において、外国の結核高蔓延地域出生者の結核発病が課題となっています。これらの国々ではわが国よりも薬剤耐性結核の割合が高いこともあり、今後薬剤耐性の結核治療などの専門知識を持った医師(感染症医)がこれまで以上に必要とされています。またHIV・AIDS診療について、近年ではHIVに感染しても薬剤治療によりAIDSの発症を抑制・遅延させることが可能であり、AIDSを発症しても早期発見・早期治療によってほとんどの場合慢性的な経過をたどることができるようになっています。そのため、HIV・AIDS診療の専門知識を持った医師(感染症医)がこれまで以上に必要とされています。

一方、これまでにもエボラ出血熱やSARS・MERSなどの感染症や、2009年に発生した新型インフルエンザなど、新興・再興感染症に関する健康危機管理は課題とされていましたが、2019年に発生した新型コロナウイルス感染症では、感染症に関する健康危機管理が改めて注目されることになりました。特に、わが国においては感染症を専門とする医師が多くない中、大阪府では他府県に比べても感染症専門医が少ない現状があります。今後の感染症危機管理に対応する体制構築のためにも、感染症診療や感染予防対策、危機管理対応等、感染症に関する幅広い専門知識を持った医師(感染症医)が必要とされています。

総合診療

わが国では、諸外国に比べても急速に超高齢化が進む中、高齢者の疾患は複合化・複雑化し、医療需要の変化へ適切に対応していくことが求められています。また、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、地域包括ケアシステムの構築が推進されています。その中で近年では、個々の対応にとどまらず地域ごとの特性や医療需要も考慮して医療資源につなぎ、医療から地域づくりに参画できる総合診療医がこれからの地域医療を支えていくべきと言われています。そのため、幅広く多様な健康問題を網羅的に迅速かつ的確に判断できる一方で、社会背景も十分に配慮しながら全人的な医療を提供することができる総合診療医の養成が急務になっています。

例えば救急患者の初期診療を担当して的確な診断や診療の上で適切な専門の診療科へつなぐ能力を持つ医師や、高齢患者が持つ複数の疾患を見極めながら慢性期の間は自身で診療をしながらも、疾病の増悪時には適切な専門の診療科と必要な連携を取りながら的確な診断や診療ができる能力を持つ医師など、総合診療医にも様々な形が存在し提案されていますが、その中でも特に大阪府で必要とされる「都市型の総合診療医」の確保や育成に向けた取り組みを進めています。

精神科医療

大阪府における通院医療費公費負担患者数や精神保健福祉手帳所持者数は、全国と同様に増加傾向です。特に従来から精神科で対応してきた神経症や統合失調症、およびそれらに伴う障がいだけではなく、気分障がいやストレス障がいなど、近年になって患者数が増えてきた疾患もあり、精神科のニーズは近年大幅に増加してきました。

一方で、精神疾患は他疾患に比べて医療につながりにくいために未受診者の潜在的な医療ニーズが存在することや、急激な高齢化に伴う認知症患者の増加による精神科ニーズの増大、アルコールや薬物、ギャンブル等の依存症対策といった新たな課題への対応など、精神科医療へのニーズは今後も高まることが予想されることから、それらに対応できる精神科医師の確保が必要とされています。

公衆衛生(行政)

全国の都道府県や政令市、中核市、特別区などは、地域保健法に基づいて保健所を設置することが定められており、保健所長は原則として医師であることとされています。また、都道府県庁や政令市の市役所、保健センターなど、地域保健分野の行政機関で働く医師については「公衆衛生医師」と呼ばれています(*注:大阪府では「行政医師」と呼んでいます)。

都道府県などの地方自治体で働く公衆衛生医師(行政医師)は、本庁と呼ばれる都道府県庁や市役所、またはその出先機関である保健所において、感染症、母子保健、生活習慣病・がん、難病、精神保健福祉、食品や環境などに関する生活衛生、医事・薬事などの分野に取り組んできました。加えて近年では、地域包括ケアシステムの推進や健康危機管理への取り組みなど、一つの専門性だけでは解決できない課題に対して、医療や介護・福祉の専門職、地域住民を含む関係者、関係機関等と協働しながら行政の立場から取り組んでいます。

大阪府内でも府保健所や府庁などにおいて、また府内の政令市や中核市では各市の保健所や市役所などにおいて公衆衛生医師(行政医師)が働いていますが、全国的に公衆衛生医師は不足していることから、今後も引き続き医師の確保が必要とされています。

【リンク】

【参考文献】

  • 大阪府医師確保計画,P27,医師確保の課題

総人口・人口構成

大阪府の人口は、平成27年には8,839,469人で、平成22年と比べると25,776人、率にして0.29%の減少となり、昭和22年以降68年ぶりに減少に転じました。今後も総人口の減少が見込まれる中、特に75歳以上の後期高齢者人口は、平成27(2015)年の約103万人が2025年には約153万人となり、高齢化率は上昇の一途をたどると予測されています。

世帯数

大阪府の総世帯数は、平成27(2015)年には3,935,214世帯で、平成22(2010)年と比べると112,031世帯、2.9%増加しています。特に65歳以上の単独世帯数は、2025年には約61万世帯、全世帯数に占める割合が15.6%となり、全国(13.4%)と比較しても割合が高くなることが予測されています。

出典 総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所
「日本の地域別将来推計人口」
出典 国立社会保障・人口問題研究所
「日本の世帯数の将来推計」

出生と死亡

出生数と死亡数

大阪府の平成28年の出生数は68,816人であり、前年と比べると1,780人減少と平成10年から緩やかな減少傾向が続き、ピークだった昭和47年のおおよそ4割程度の水準になっています。一方、平成28年の死亡数は84,390人で前年と比べると813人増加となり、高齢化の進展に伴って緩やかな増加傾向が続いています。また、平成22年にははじめて出生数を死亡数が上回り、その後もその差は拡大しています。

出典 厚生労働省「人口動態統計」、総務省「日本の統計」

二次医療圏別出生率と死亡率

府内の二次医療圏別の人口千対出生率・死亡率は、豊能二次医療圏においてのみ出生率が死亡率を上回っており、その他の二次医療圏においては死亡率が出生率を上回っています。

出典 厚生労働省「人口動態統計」

※「人口千対」算出に用いた人口は、大阪府総務部「大阪府の推計人口(平成26年10月1日現在)」

平均寿命・健康寿命

大阪府における平均寿命注1は、平成27年には男性80.23年(全国第38位)、女性86.73年(全国第38位)であり、昭和45年と比較すると男女ともに10年近く伸びています。大阪府における健康寿命注2は、平成25年には男性70.46年、女性72.49年となっており、平均寿命と健康寿命の間には大阪府の男性で約9年、女性で約13年の差があります。

出典 厚生労働省「完全生命表」「都道府県別生命表」
出典 大阪府「第2次大阪府健康増進計画最終評価」

大阪府の特定機能病院

医療施設機能の体系化の一環として、高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力等を備えた病院について、厚生労働大臣が個別に承認する病院で、医療技術の進歩・人材の育成等により、広く国民の健康に貢献する役割を担っています。

承認を受けている病院

  1. 大阪大学医学部附属病院(吹田市)
  2. 国立研究開発法人 国立循環器病研究センター(吹田市)
  3. 大阪医科大学附属病院(高槻市)
  4. 関西医科大学附属病院(枚方市)
  5. 学校法人近畿大学 近畿大学医学部附属病院(大阪狭山市)
  6. 大阪市立大学医学部附属病院(大阪市)
  7. 独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター(大阪市)

大阪府の地域医療支援病院

患者に身近な地域で医療が提供されることが望ましいという観点から、紹介患者に対する医療提供、医療機器等の共同利用の実施等を通じて、第一線の地域医療を担うかかりつけ医、かかりつけ歯科医師等を支援する能力を備え、地域医療の確保を図る病院として相応しい構造設備等を有するものについて、都道府県知事が承認する病院で、「紹介患者に対する医療の提供(かかりつけ医等への患者の逆紹介も含む)」、「医療機器の共同利用の実施」、「救急医療の提供」、「地域の医療従事者に対する研修の実施」という役割を担っています。

承認を受けている病院

  • 豊能二次医療圏   5施設
  • 三島二次医療圏   3施設
  • 北河内二次医療圏  3施設
  • 中河内二次医療圏  3施設
  • 南河内二次医療圏  1施設
  • 堺市二次医療圏   5施設
  • 泉州二次医療圏   3施設
  • 大阪市二次医療圏  12施設

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